相続用語解説

専門用語を体系的に理解

🔍 用語検索

📚 章を選択

🏷️ タグで絞り込み

相続・相続税の専門用語解説

日本の相続制度は、民法と相続税法の二重構造により複雑になっています。 このページでは、相続の開始から税金の申告・納付まで、全過程で登場する重要な専門用語を体系的に解説します。

1章:基礎知識

相続の当事者と基本原則

被相続人(ひそうぞくにん)
重要

亡くなった方で、その財産が相続の対象となる個人を指します。すべての相続手続きの起点となる人物です。

相続人(そうぞくにん)
重要

被相続人の財産を承継する権利を有する者を指します。法定相続人には民法で定められた優先順位があります。

法定相続人(ほうていそうぞくにん)
重要

民法の規定によって相続人となる資格が定められている人々です。配偶者は常に法定相続人となり、その他の親族には優先順位があります。

代襲相続(だいしゅうそうぞく)

本来相続人となるべき子または兄弟姉妹が既に死亡している場合に、その者の子が代わりに相続権を引き継ぐ制度です。

相続欠格(そうぞくけっかく)
重要

重大な非行(殺害、遺言書偽造など)を行った相続人が、法律上当然に相続権を失う制度です。被相続人の意思や裁判所への申立ては不要です。

相続人の廃除(そうぞくにんのはいじょ)

被相続人が虐待や重大な侮辱を受けた場合に、推定相続人の相続権を剥奪する制度。家庭裁判所への申立てが必要で、認められるケースは多くありません。

2章:相続財産

財産の種類と評価

プラスの財産(ぷらすのざいさん)

積極財産とも言います。現金、預貯金、不動産、有価証券、自動車など、金銭的価値のあるすべての資産を指します。

マイナスの財産(まいなすのざいさん)

消極財産とも言います。借入金、ローン、未払いの税金、クレジットカードの未払い分など、すべての債務や負債を指します。

みなし相続財産(みなしそうぞくざいさん)
重要

民法上は遺産ではないが、税法上は相続によって取得したものとみなされる財産。生命保険金や死亡退職金が典型例です。

生命保険金(せいめいほけんきん)

被相続人の死亡により相続人が受け取る死亡保険金。みなし相続財産として課税対象ですが、相続人には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。

死亡退職金(しぼうたいしょくきん)

被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職金や功労金。みなし相続財産として課税対象ですが、相続人には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。

3章:相続方法

3つの選択肢

相続方法の比較

3つの相続方法の特徴を比較して、最適な選択肢を検討しましょう

単純承認

簡単

プラスとマイナスの財産をすべて相続

期限: 自動(3ヶ月経過後)

メリット

  • 手続きが不要(自動的に成立)
  • プラスの財産をすべて取得可能
  • 相続人間での合意が不要

デメリット

  • 借金も全額相続
  • 債務が資産を上回る場合のリスク

必要な手続き

  • 特別な手続きなし
  • 熟慮期間内に他の選択をしない

限定承認

複雑

プラス財産の範囲内で債務を弁済

期限: 3ヶ月以内

メリット

  • 債務超過のリスクを回避
  • プラス財産が残れば取得可能
  • 家業承継に有効

デメリット

  • 手続きが複雑
  • 相続人全員の同意が必要
  • 清算手続きに時間がかかる
  • 譲渡税が発生する可能性

必要な手続き

  • 相続人全員での申述
  • 家庭裁判所への申立て
  • 財産目録の作成・提出

相続放棄

普通

相続権を完全に放棄

期限: 3ヶ月以内

メリット

  • 債務を一切負わない
  • 手続きが比較的簡単
  • 個人で判断可能

デメリット

  • プラス財産も取得不可
  • 撤回が原則不可
  • 代襲相続が発生する可能性

必要な手続き

  • 家庭裁判所への申述
  • 申述書と必要書類の提出
重要な注意点
相続方法の選択は、相続開始を知った時から3ヶ月以内に決定する必要があります。 期限を過ぎると自動的に単純承認となりますので、早めの検討をお勧めします。
熟慮期間(じゅくりょきかん)
3ヶ月以内
重要

相続人が遺産の状況を調査し、相続を承認するか放棄するかを決定するための期間。原則として3ヶ月以内です。

単純承認(たんじゅんしょうにん)
重要

被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて無条件に引き継ぐ方法。熟慮期間内に他の選択をしなかった場合、自動的にこれになります。

限定承認(げんていしょうにん)

プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を弁済する責任を負う相続方法。相続人全員が共同で家庭裁判所に申し立てる必要があります。

相続放棄(そうぞくほうき)
3ヶ月以内
重要

プラスの財産もマイナスの財産も一切の相続権を放棄する方法。熟慮期間内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

4章:遺産分割

公平な分け方

遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)
重要

法定相続人全員が集まり、誰がどの財産をどれだけ相続するかを話し合って決める手続きです。

現物分割(げんぶつぶんかつ)

遺産をそのままの形で分割する方法。例:相続人Aが自宅、相続人Bが株式を取得する。

代償分割(だいしょうぶんかつ)

一人が遺産を単独相続し、他の相続人に代償金を支払う方法。自宅や事業用地など分割困難な財産に適用されます。

換価分割(かんかぶんかつ)

遺産を売却して現金化し、その現金を相続分に応じて分配する方法。公平な分割が可能ですが、財産を手放すことになります。

共有分割(きょうゆうぶんかつ)
参考

不動産などを複数の相続人が共有名義で相続する方法。将来の売却時に全員の同意が必要となり、紛争の火種となりやすいため推奨されません。

5章:遺言・遺留分

意思の実現と権利保護

自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)

遺言者が全文、日付、氏名を自書し印を押して作成する遺言。2020年から法務局での保管制度が開始されました。

公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)

公証役場で公証人が作成する遺言。2人以上の証人立会いが必要ですが、最も確実で安全な遺言方式です。

遺留分(いりゅうぶん)
重要

法定相続人(兄弟姉妹を除く)に法律上保障された最低限の相続分。遺言によっても奪うことができない権利です。

遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)
1年以内
重要

遺留分を侵害された相続人が、侵害者に対して金銭の支払いを求める権利。侵害の事実を知った時から1年以内(最大で相続開始から10年以内)に行使が必要です。

6章:相続税

計算と控除制度

未成年者控除(みせいねんしゃこうじょ)
参考

18歳未満の相続人に適用される税額控除。「(18歳−相続開始時の年齢)×10万円」で計算されます。年齢の1年未満の端数は切り捨てです。

障害者控除(しょうがいしゃこうじょ)
参考

障害者である相続人に適用される税額控除。一般障害者は「(85歳−年齢)×10万円」、特別障害者は「(85歳−年齢)×20万円」で計算されます。

基礎控除(きそこうじょ)
重要

相続税がかかるかどうかのボーダーライン。「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。

配偶者の税額軽減(はいぐうしゃのぜいがくけいげん)
重要

配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかからない制度です。

小規模宅地等の特例(しょうきぼたくちとうのとくれい)
重要

被相続人の居住用や事業用の土地を一定の要件を満たす親族が相続した場合、土地の評価額を最大80%減額できる制度です。

7章:申告・手続き

最終段階の手続き

申告期限(しんこくきげん)
10ヶ月以内
重要

相続税の申告と納税の期限。相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

準確定申告(じゅんかくていしんこく)
4ヶ月以内

被相続人の死亡年の1月1日から死亡日までの所得税の確定申告。相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に申告が必要です。

相続登記(そうぞくとうき)
3年以内
重要

不動産の名義変更手続き。2024年4月から義務化され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。